社会民主主義は、世界の潮流です。
野放しの資本主義経済によって引き起こされる貧困、環境、国際協調などの問題を解決し、社会との共生を追求する社民主義=修正資本主義が、ますます必要になってきている今日です。
世界の歴史を通じて、経済全体の成長率gより、資本の収益率 r が大きい、
r > g という法則が続いています*。
つまり株の運用、不動産所得などの金融資産性所得は、労働による所得より速く利益が貯まって、働かなくても資産運用で儲けを加速度的に増やせます。それに対して、99%の国民はこうした社会制度の下で給与所得を増やせず、消費を増やせないことが現在の景気低迷の真の原因です。
日本の社民党はこの、世代を超えて拡大する格差を是正するために、
○所得税を基幹税とし、累進制を強化して「払える人が多く払う」という税の「応能負担」を税政策のひとつ目の柱としています。
また富裕層への優遇ではマネーゲームが加速するだけで、景気回復の元となる労働資本への投資は望めません。金融資産性所得、つまりマネーゲームの税率優遇を廃して、他の所得と合算して課税する「総合課税」の導入を目指します。
○この金融資産性所得への総合課税、国際連帯税などのいわゆる「富裕税」導入で、富の再分配機能の修復を図ることが2つ目の柱です。
○そして労働資本への投資の主力である中小企業への税控除を考慮しながら、労働者の賃金向上を図ることが、3つめの柱です。
これら3つの柱、税制改革による税収増と、労働者の購買力底上げが、真の景気回復の王道です。
(社民ユース東京)
【社民党の税政策】
大企業や富裕層を優遇し、経済格差をもたらす「アベノミクス」ではなく、「国民ひとりひとりの所得が増える経済対策」で消費と内需の拡大を図ります。
過去十数年の税収の推移を見ていくと、結局、法人税と所得税が減って、減った分を消費税が代替しているという形になっています。
この割合を所得税19兆、法人税14.5兆、消費税6兆に戻す、という現実的な社民党の税制改革です。
(2014年衆院選公約)
【所得税】
日本の所得税は最高税率が45%というと、とても高く見えますが、4000万円を超えた部分に対してです。不労所得である金融所得への税率が20%というのは非常に低いです。日本の税制は、他の先進国に比べて、払える人が払う、という応能負担制度の導入が遅れています。
・所得税を基幹税と位置付け、再分配機能や財源調達機能を回復します。
・所得税の最高税率を当面50%に引き上げるだけでなく、応能負担と累進性を強化するため、ブラケット(税率のきざみ段階)を細分化します。
【消費税】
●社会保障の充実の約束が守られていない消費税8%を許さないことはもとより、税率の10%引き上げは先送りではなく撤回し、消費税を5%に引き下げます。
【資産課税】
・金融資産性所得に対する課税を強化し、総合課税を追求します。
・贈与税に関しては、家族内の所得移転ではなく、国による再分配機能を重視します。また、相続時精算課税制度における過剰な非課税枠(2500万円)を見直します。
・相続税は、富の社会への還元と格差是正をはかる観点から、最高税率を引き上げます。不合理な連帯納付制度は引き続き見直し、延滞税を引き下げます。要件の厳しい事業承継税制は見直します。
・膨大な金融資産などに対する富裕税を導入します。
【環境税・国際連帯税】
・地球温暖化対策税やガソリン税、自動車関係税を環境税(炭素税)として組みかえます。
・地球規模の課題を解決するため、航空券連帯税、金融取引税などを早期に導入します。
【所得控除】
・健康で文化的な最低限度の生活には税を課さない(最低生活費非課税)という理念のもと、基礎控除に関しては最低生活費を大きく下回る現在の38万円分を倍増するとともに、税額控除化を検討します。→生存権へ
・給与所得控除は、高額所得者層の上限(収入金額が1500万円を超える場合245万円)を引き下げます。一方、低・中所得者の給与所得控除を圧縮することには反対します。
・低所得者や子育て世帯に対する「給付つき税額控除」(所得税の減額と給付金の支給を組み合わせて生活を支援するしくみ)を検討します。導入の際は、所得税の応能負担や累進性・再分配機能・最低生活費非課税の重要性を踏まえ、各種控除の統合・廃止による負担増が生じないよう、所得の向上を目的とします。
・廃止された老年者控除(65歳以上所得1000万円以下、所得税50万円・住民税48万円を控除)や縮小された公的年金等控除(最低保障額120万円)を140万円に戻すなど、公的年金税制を回復し、年金生活者の負担を軽減します。
・寄附金控除は、適用下限額(現行2000円)を撤廃するなど寄付金税制を引き続き拡充します。
・勤労者への生活設計支援のために、財形住宅貯蓄制度の非課税限度額を拡大します。→ 住宅政策へ
・非婚のシングルマザーに対しても寡婦控除を適用するようにします。→生存権へ
【法人税】
・社会保障費の企業負担が少ない日本の企業に対し、法人税率の引き下げを転換するとともに、租税特別措置や各種優遇措置を見直し課税ベースを拡大します。
・国家間の法人税率引き下げ競争・国際的な税逃れを防ぐ協調体制を構築します。
・中小企業に対する法人税率は、対象所得(800万円)を引き上げるとともに、税率を11%(現在15%)に引き下げます。
・IFRS(国際会計基準)に対しては、国際動向、法人税収への影響などを見極め、慎重に対応します。中小企業に対しては「中小会計要領」の普及に努めます。
【財政金融】
日本銀行は、世界に先駆け、ゼロ金利政策、量的緩和、包括的な金融緩和政策などを進めてきました。しかし、デフレの脱却には至らず、雇用者所得も上がらず、雇用の非正規化が進みました。よって、更なる金融緩和に頼るだけではなく、格差・貧困の縮小、将来不安の解消、雇用の安定に向けた財政政策を実施し、国内需要を喚起します。
・金融機関による貸し渋り・貸しはがしを防止し、金融機関から中小零細企業への円滑な融資を行うよう監視します。
・政府の介入を強め、戦時立法だったかつての日銀法に逆戻りしかねない日銀法改正に反対します。
・不公平税制の転換と経済成長による税収増で財政再建を目指すとともに、中期的な財政健全化プログラムを新規に策定します。
・改正貸金業法を堅持するとともに、高金利に頼らなくても生活できるセーフティネットの構築や総合的な生活・経営相談ができる体制を充実します。
(・は2013年参院選および2012年衆院選公約より)
○経済効果が不透明で、ギャンブル依存症を生み出すカジノ解禁には反対します。
・郵貯や年金を政府自らが投資を行うような運用失敗を許さず、郵貯資金を地方経済活性化に貢献する中小企業用の信用保証協会に融資する道を開く政策を進めます。
○「地域再投資法」を制定し、地域金融を円滑にします。
*ヨーロッパの社会民主主義政策による再分配機能の正しさをデータとともに証明し、社会民主政策を強める必要性を説いています。米仏でベストセラーとなった「21世紀の資本論」の和訳抜粋をご紹介します
トマピケティ「21世紀の資本論」冒頭“超訳”
【富の分配議論と政策は、データの乏しいわずかな事実に基づいて展開されていた】
ヨーロッパの貴族が支配していた農地という資本を持つ者は、紀元後から今日まで時代を問わず、5%の税引後利益を得ていました。図表10.9一方、経済全体の成長率は産業革命以前には1%以下にとどまり、格差と社会階層はしっかりと固定されていました。
ところが産業革命による身分格差の崩壊と社会の安定により人口急増、経済成長が徐々に進みます。
この産業革命以降、人口急増で余った人手が工場労働者=都市生活者や、中産階級家庭や商家で働く使用人などとなり、新しい社会階層が生まれました。貴族層から新しい資本家層=起業家に実力が移り、資産がもたらす富への集中が進行しました。19世紀を写す映画やジェーンオースティンやバルザックなどの小説が、この時代の不平等の深い構造を記しています。旧貴族からは成金と言われた産業家と没落貴族の政略結婚、富裕層との出会いの機会が増えて社会構造を理解しはじめた人々が、不幸脱出を夢見る様子…。富の分配は経済学者、社会学者、歴史家、哲学者にとって重すぎる課題であり、専門家たちの共和国によって為されず、現実を知る庶民や小説家が加わる民主主義は好ましくあります。しかしその一方、不平等には主観的で心理的な側面もあり、富の分配については組織的で秩序だった方法で研究されるに値します。結論ありきの政策ではなく、理論に偏ることもなく、落ち着いた分析により得られたデータを民主的な議論の場に提示することで、先入観や誤った概念を崩すことができます。
【経済学史における希少性の原理】
1817年に「経済学および課税の原理」を著したデヴィッドリカードは、「人口と生産の両方が定率で成長する時代には、土地は他の財に対して希少性を増し、地代の上昇が続くようになる。地主たちが国民所得に対するシェアを増加させていき、その他の人々が受け取る所得は減少する」と述べています。
工業生産の成長により、農業以外の所得が高まるにつれ農地の地代が下がったことで、この予測が実現せずに済みましたが、現代の希少価値のある財、例えば首都の不動産価格であったり、石油価格に置き換えれば、これらの価値が上昇し続けるという希少性原理が当てはまります。需要と供給のメカニズムで自然に調整される、つまり高額家賃を払うより田舎に住むことが促進される、田舎で必要な自動車もガソリンが高すぎるので自転車で済ませる、ということを述べるまでもなく、都市の地主やカタールの首長は2050年になっても、いや地上のすべての土地や財産を所有するまで富を増やし続けるでしょう。
【産業労働者の貧困】
リカードの半世紀後までに急速に産業資本主義が発展し、都市部労働者の困窮はジェルミナル、オリバーツイスト、レミゼラブルの中に表現されました。18世紀から19世紀にかけては、経済成長が加速していたにもかかわらず、購買力に対して賃金上昇が起こらなかったことが現在入手できる歴史データが示しています。産業利益が増加し、労働者の所得が停滞する中、政治家たちは8歳以下の子供の工場労働を禁じることしかできなかった。1848年「共産党宣言」を著したマルクスは、資本が不動産ではなく工場や機械などの産業資本について、「無限蓄積の原理」を示しました。産業資本の収益率の不確実性のために、また19世紀最後の賃金上昇により、この予言も実現せずに済みました。不平等は続いたものの、産業革命が遅れて始まったロシアで共産主義革命が起こったものの、ヨーロッパの諸国は社会民主主義の経路を探求していったからです。マルクスは私的資本が完全に廃止された社会がどのように組織されるか、悲劇的な全体主義の実験によって示された複雑な問題などには、疑問を呈していなかったのです。
【累進所得税 イギリス1909年、アメリカ1913年、フランス1914年、インド1922年】
サイモン・クズネッツによって、米国の1913年~1948年の合衆国全体の国民所得が推計され、第一次大戦の頃に所得トップ10%の人々は国民所得の45~50%を得ていたのが、1940年代の末には30%から35%にまで低下したという不均衡の低下というデータにより、不平等の低下が明らかにされました。この事実によって、発展が進んだ段階ではより多くの人口が経済成長の果実を受け取っていき、不平等は自然に低下するという楽観論が生み出されました。
しかしこれには戦争や恐慌によって資本が破壊されたこと、また植民地独立によって海外投資が失われたという偶然によるもので、普遍的な法則ではないことは、クズネッツ自身が知っていました。21世紀の最初の10年間において、19世紀末よりも大きな所得の集中が起こっています。このまま進めば、2050年、2100年はトレーダー、経営トップ、スーパーリッチたちに世界が所有されているのでしょうか?それとも産油国や中国銀行にでしょうか?
とにかく、クズネッツらの楽観論によりあまりにも長い間、経済学者は富の分配を無視してきました。
成長が自動的に均整なものになると信じるべき根本的な理由は何もありません。
第一の結論
富の分配の歴史は非常に政治的なものであって、1910年と1950年の間に起こった不均衡の低下は戦争と、戦争ショックに対応しようとした政策の結果である。同様に1980年以降の不均衡の復活は、課税と金融が要因である。
第二の結論
・不平等を減少させるメカニズムとして重要なのは、「知識の伝播と訓練とスキルへの投資」である。
しかし金融資本や不動産に対して人的スキルが勝利することはわずかな楽観論にしかすぎない。
・供給と需要の法則や、資本と労働の流動性という経済法則の影響力は知識の伝播とスキルほど強力ではなく、その結果は明確ではなく逆にもなる。
・不労所得者と労働力しか持たない若者との世代間闘争は、やがて年を取れば貯蓄がふえるという不均衡是正論があっても、可能性も影響力も小さい。
決定的な事実は、知識とスキルの伝播が強力であろうとも、逆方向の不平等へと向かうさらに強い力に妨げられる。成長率が低く資本の収益率が高い時には、富の蓄積と集中が全世界へ発散することである。
【不公平発散への根本的力】
世界の歴史を通じて、経済全体の成長率gより、資本の収益率Rが大きい、
r>g という法則が続いていました。マルクスの無限蓄積と永続的な発散 という時代も含まれます。
両大戦の間のように、r<gと経済成長が資本収益より上回る政策を行うことは可能です。
この無常なる法則に対抗する公的制度や政策は、例えば資本への累進的かつ世界全体での税です。
資本過剰は、人口が減少して成長率の下がる国でもっとも顕著にあらわれ、その例が日本です。第二次大戦後、欧米の水準にキャッチアップする過程ではg>rだったが、80年代に逆転。90年代にはバブル崩壊で成長が止まり、r>gになって企業の貯蓄超過が起こり、賃金が下がりました。
【経済学は他の社会科学から離婚するべきではなかった】
19世紀末と同様、再び現在、自らの労働にて生み出される経済成長(起業することなど)より、労働をせずに得られる資本収益にますます投資が集まり、大企業への加速度的な資本集中と資本分配率の高まりが生じています。格差の広がりはとどまることを知らないという説。その反対に不平等は自然に調和するからこの均衡を無くすような介入は許されないという「目や耳をふさいでいる人」たちもいます。
この本は統計学に裏打ちされた経済学の研究であるのと同じくらい、歴史の研究でもあります。
労働分配率が上がることは二度とない、したがって「多くの人々の窮状を防ぐには、過激な再分配を行うことが必要」ということがピケティの結論です。
【その他の論評】
・日本のデフレの原因がこのような長期停滞による資本過剰だとすれば、金融政策での是正は不可能。
・上級の企業幹部の収入が急上昇。米国では今、全所得の約50%が上位10%の人たちに渡っている。
・生産設備や金融資産、不動産といった資産の蓄積が進み、こうした資産が、その国の1年の経済活動を示す国内総生産(GDP)の何倍あるかは、1970年時点では欧州では2~3倍。それが今は5~6倍になっており、国によっては6~7倍
・「世襲資本主義への回帰」資産を所有している人の偏りが大きくなりがちで、親から子へと引き継がれてしまう。第2次大戦後の1950年代~70年代の高度成長期は少なくともフランスでは、持っている資産ではなく、能力主義で差がつくような新しい社会になる、という希望がありました。しかしそれは、戦争で富が破壊されたからにすぎなかった。
・1987年から2013年までの期間、最上クラスの資産家たちは平均の3倍以上のペースで資産を増やしている。
・不平等は、公共の利益にかなう限り受け入れてもいい。それが経済成長をもたらし、すべての人の生活水準を良くするものである限りは。問題は、不平等が行きすぎることの悪影響です。
・不平等が行きすぎれば、社会階層や職業などの間の流動性を小さくしてしまいます。すでに米国では、教育の機会は非常に不平等なものになっています。
・収入と資産の両方に、額が大きいほど税率が高くなる累進課税をかける必要があります。100万ドル(1億200万円)の管理職の年収を10倍にしたところで、それほど業績が上がるわけではありません。最上級の収入の人に高い課税を求めることで、際限なく報酬が上昇するのを防ぐことができます
・資産への累進課税は、もっと重要です。多くの国で不動産に課税していますが、このやり方では、住宅ローンを抱えた人も、相続した人も同じ額を払わなければいけません。資産から負債を差し引いた純資産に累進課税をかければ、中間層の資産形成を促し、大金持ちへの資産の集中に制限を加えることができます。しかし、大金持ちは外国に逃げようとするかもしれません。国際的な協調が必要です
・米国とEUの間で、貿易や投資の自由化のための話し合いがこれから進みます。このなかで、租税回避防止策や多国籍企業への課税など、税制の分野で協力できることはあると思います。資産を世界規模で把握することは、金融を規制するうえでも重要です。一歩一歩前に進むべきです
・課税の累進性を強めると、比較的富裕な層の経済活動が鈍くなり、結果として経済成長を鈍化させるため、慎重に扱わなければなりません。実利的に考えるべきです。すべては、どのような水準の収入や資産にどのような税率をかけるかに、かかっています。確かに年収20万ドル(2040万円)の人に80%の最高税率が課せられたら、やる気を失ってしまうでしょう。でも、年収100万ドルや500万ドルであれば大丈夫だと思います。資産への課税も同じです。巨額の資産があり、そこから年6~7%の収益を得ている人に1~2%の税金をかけることは大きな問題ではないでしょう
・米国が不平等を気にしない国ではありません。長いあいだ、少なくとも白人にとっては米国は欧州よりも平等でした。100年前には、欧州のように不平等になったらどうしようと心配していたくらいです。第2次大戦の直後、連合国に占領された日本やドイツでは一時、所得税の最高税率が90%になりました。米国が日独のお金持ちを罰しようとしたのではなく、それがいい税制だと米国で考えられていたからでした。民主政治が金権政治になるのを防ぐ財政制度が必要だと、彼らは考えていたのです。しかし今日の米国では、不平等がどんどん進み、民主的制度への潜在的な脅威になっています。先日、米連邦最高裁が選挙向けの献金の上限を撤廃する判決を出しましたが、それを象徴しています。政治が少数のエリート層に握られてしまうことへの懸念が高まっています
・積極的な分配政策を行っている北欧福祉国家でも、富の集中が起きています。分配の強化や、富裕課税をより強化しなければなりません。